わが夢は星の彼方餓GAROU狼→小説



暗いな・・・
誰も居ない・・・
私は一人・・・
いつの頃からか、一人が寂しく感じなくなったのは・・・
幸せって何だろう。

私は、カイン・R・ハインライン。
私と同じ顔・・同じ声・・同じ目・・同じ髪をした人にそう教えられた。
私は何の為にここに居るの・・?
ここから、一度も出たことは無い。
ここに居る前は何処で何をしていたのか、全く知らない。
ずっと一人。
金色の髪をくるくると弄くって、時々聞こえる外からの声に耳を傾ける。
外はどうなっているのかな。
出てみたい・・・。
でも、カイン様が・・「時が来るまで、外には出るな」って。
時って何時?
何時になったら迎えに来てくれるの?
このままずっとココに居るのかな。
良いけどね・・別に。

大体カイン様・・私の事覚えてるのかな・・。
もし、忘れてたら・・。
私の事を知っている人は居ない・・?
そしたら・・誰も来てくれない・・・・?
・・・・。
ずっと一人。

誰かと一緒に居るって、どんな気持ちだろう・・。
気持ちいいのかな。
私も誰かと一緒に居たいな。
・・・でも無理。
外に出れないもん。
つまんない・・・・。


「誰か居るのか?」
初めて聞いた、自分以外の声。
「誰かを待ってるのか?」
そう・・待ってる。
「誰を?」
・・・私を迎えに来てくれる人。
一緒に居てくれる人。
もう・・ここに居たくない。
黙っている私を置いて、去って行こうとする声の主に向かって口を開く。
「私も・・連れて行って。」
すると、こちらを振り返り、歩み寄ってきた。
「良いだろう。」
うずくまっていた私の手を引いて立たせる。
「名前は?」
カイン・・でいいのかな・・・。
「・・・・・」
私が困っていると、
「無いなら、俺が付けてやる。」
うん。とうなずく。
「ミヤギ、で良いな。嫌なら自分で考えろ。」
「ううん。嫌じゃ無い。」
名前。私の名前。
「俺は、フリーマン。よろしくな・・ミヤギ。」


その夜、初めて外に出た。
めずらしいモノを一杯見た。
月・・・。
星・・・。
ひゅーひゅーって言いながら飛んでるのも見た。
それから・・・。
カイン様?
自分と同じ顔した人間が、誰かと一緒に歩いてる。
ぼーっと見ていると、後ろからフリーマンがのぞき込んだ。
「あれは、カインの影、だな。」
「かげ?」
「隣に居るのは、そのパートナー。」
「パートナー・・」
影・・。
影は私なのに・・・。
パートナーって、いつも一緒に居られる?
影は私なのに・・・。
急に腹立たしくなってきた。
・・・・・。
それに気づいたフリーマンは、後ろからミヤギを抱きしめた。
「気にするな。欲しいなら奪えばいい。」
暖かくて気持ちいい。
「俺で良ければ、ずっと一緒に居てやろう。」
「本当?」
ずっといっしょ・・・。
「ああ。」
一人じゃ無い・・。
「パパって呼んでも良い?」
「ああ。」


その様子を、遠くからジェニーが見ていた。
端から見ると、ラブラブ以外のなにものでも無いわね・・・。
と思いつつ、ハリアビーでフリーマンに突進。
見事にヒット。
「何をする・・・」
「パパ、冷静に言い返すのは良いけど、頭から血が・・・。」
「大体、その可愛い子は何処から連れてきたの!?」
びしっとミヤギを指さす。
「拾った。」
「ロックオン☆げっきつ〜い☆」
端から見ると、痴話喧嘩以外のなにものでも無いな・・・。
とミヤギは思った。

二人の戦闘は数十分続き・・・。

「とにかく!!ミヤギちゃんは私が面倒見るわ!!」
「いや、俺だ。」
「あなたじゃ、絶対に無理よ!!」
「何を言う・・お前など、逆にミヤギに面倒をかけるだろ・・・気短いし、すぐに潜在発動するし・・。」
その様子をじっと見ていたミヤギが、二人に飛びついて来た。
二人はあっけに取られてミヤギを見る。
「じゃあ、私のパパ(フリーマンを見る)とママ(ジェニーを見る)だね。」
「「パパとママ?」」
二人は顔を見合わせ、怪訝な顔をする。
ミヤギは満面の笑顔を浮かべて、二人の手を取った。
・・・・まあ良いか。
嬉しそうなミヤギの笑顔を見て、二人は思った。


これからは一人じゃ無い。
一緒に、ずっと一緒に居てくれる。
パパとママが居てくれる。
パパに抱きしめてもらって。
ママに抱きしめてもらって眠った。
悲しく無いのに、涙がこぼれた。
私は、今。
とっても、幸せ。


ずっと一緒に居てね・・・・。

Aya 00.5.10



あとがき
ミヤギちゃんは、ずーっと一人で寂しかったのですね。
カイン様の薄情者。
素敵なパパとママ、私もこんな親が欲しい・・・・クククv