わが夢は星の彼方→伽耶の目指せ天下一!!→想いのカタチ
『想いのカタチ』 今日も朝から怒鳴り声。 (空きもせずに良くやるよ、二人共ι) 心の声が聞こえるはずもなく。 表で元気に騒いでいる親を冷めた目で見つめるひとりの少年。 名を『悟飯』 「悟空さ!まぁた悟飯ちゃんのお勉強の邪魔して!いい加減にするだ!!」 包丁片手に追いかけるチチ。 「うわぁ、わぁ!や・・・やめろってチチ!危ねぇじゃねぇか・・・って、おっと!」 紙一重でチチの攻撃をすべて避けながら逃げる悟空。 (はぁ・・・) 悟飯のため息にはふたつの意味があった。 ひとつは親に対する情けなさ。 もうひとつは勉強したくてもうるさくて集中出来ない自分への情けなさ。 親に向かって 『うるさーーーい!!!』 そう叫べない自分が辛い。 (僕ってやっぱりお父さんに似たのかなぁ) 悩みだしたらとまらない。 悟飯はひたすら考えた。 宇宙で一番強い父がなぜ母には逆らえないのか。 なぜ母は父に対してそんなにも怒るのか。 本当は仲が良いはずなのに。 だんだん関係ないところまで考え始めてしまった悟飯の思考回路を断ち切ったのは・・・ 勢い良く開かれたドアの音だった。 入ってきたのはもちろん悟空。 追いかけてくるのももちろんチチ。 「悟飯、逃げるぞ!」 いきなり腕を捕まれ瞬間移動で連行されてしまった悟飯。 チチはふたりが消えたのを見てすぐ、やりきれない怒りを包丁に託して思い切り投げた。 消えていなければ悟空が居るであろう方向に。 姿がない今、包丁は空を切り 買Oサッ! という音をたてて突き刺さった。 悟飯の勉強机に。 ・・・一方その頃・・・ 逃げたふたりが着いた場所はカメハウスだった。 いきなり現れたふたりにビックリしてソファからひっくり返るクリリン。 「あれ?・・・ここは」 「どうやら亀仙人のじっちゃんとこに来ちまったらしいな」 起きあがりながら、落ち着き淡々と話すふたりに視線を向けて訪ねた。 「悟空、悟飯!どうしたんだよいきなり!驚いただろ!?・・・まったく。お前は何時だってそうなんだよな。周りなんか気にしないし」 嫌みの隠った笑みと言葉でなにげに刺激された悟空は素直に訳を話した。 この時のふたりが (珍しい・・・) そう、同じ想いを抱いていたことを知るのは・・・まだまだ先のお話。 「そっか。チチさんがまた・・・。お前達って懲りないよなぁι」 自分が言えなかったことを言ってくれる人が身近にいる事実がうれしかった悟飯。 この機会を逃すまいと父に質問をぶつける。 「お父さん、どうしていつもお母さんにやられてばっかりなの?たまにはやりかえしたって良いんじゃないかな?お母さんに追いかけられて逃げるお父さんなんて・・・僕、好きじゃない」 思ったことをそのまま告げる。 悟空は一瞬焦りを見せたがそこは父親のなせる技だろうか。 すぐに優しい微笑みを浮かべて静かに喋り出す。 「お父さんな、いつも母さんに迷惑ばっかりかけてるだろ?だから母さんのイライラが少しでも減ってくれればと思ってな」 最後はやはり照れくさかったのか、鼻の頭をかいている。 「それじゃあもうひとつ。どうして僕まで巻き込まれたんでしょうか?」 明らかに不機嫌になってしまっている悟飯に恐怖を感じた悟空とクリリン。 普段大人しい奴がキレるとどうなるか・・・ 二人は良く知っていた。 視線だけで会話する悟空とクリリン。 (クリリンっ!) (俺が分かるわけないだろ!?自分の息子なんだから最後まで面倒見ろよ!!) (でもさぁ・・・な?何かないかな?このままじゃ悟飯のやつマジで・・・) (分かった!考えるよ!・・・しっかし何で悟飯まで連れて着たんだ?逃げるならお前だけでも良かったはずだろ?狙われてるのは最初からお前なんだから) (いやっ・・・それはぁ・・・なぁ?) (・・・何だよ) (・・・成り行き、かな?) (・・・・・。) (クリリ〜ンι) (俺知らないからな) (そんなぁι) 「いつまでそうやっているつもりなんですか、お父さん」 目が据わりかけている悟飯の顔を頑張って直視しながら、出されていない『答え』を普段全く使わない頭を駆使して考える。 (・・・やべぇ。思い浮かばねぇぞ) 身の危険を察知したその時! 「何じゃ?二人共着ておったのか。ゆっくりしていくんじゃぞ♪」 表で寝ていたか出かけていたか定かではないが、その場に居なかった亀仙人の登場のお陰で少しだが悟飯の周りに集まりかけていた巨大な気は散会しつつあった。 (・・・今だっ!) 悟空は満面の笑みをクリリンに向けてウインクすると、そのまま瞬間移動で逃走した。 「狽っ!こら悟空ーーっ!」 張り上げた声は相手に届かず部屋の中に響きわたるしかなかった。 「・・・はぁ。あのヤロゥ、何でも最後は俺に押しつけやがって」 ぽりぽりと頭をかきながら悟飯を覗き見る。 顔は下を向いているので良く分からないが肩だけは震えていた。 悟空が質問に答えず逃げたのがショックだったようだ。 ポンッ。 そっ・・・と悟飯の肩に手をかけ語りかける。 「なぁ悟飯。あんまり悟空の事責めないでやってくれ。あいつにだって誰にも言いたくない事のひとつやふたつあるんだからさ?」 静かに上を向きクリリンを真正面から見据える悟飯。 「だけど・・・っ!」 「分かってる。お前にとっては大問題だもんなぁ、悟空が自分以外の誰かに負けるなんて」 「・・・ッ!クリリンさん、どうしてそれを」 驚きを隠せない悟飯にクリリンは答える。 「『父親を越えたい』と思うのは当たり前・・・とまではいかないが、お前の場合はそうなんじゃないかと思ってな」 「・・・」 何も言えない、聞けない悟飯の代わりに自分なりの答えを伝える。 「・・・悟空はさ、俺達にとっては『太陽』みたいなやつなんだ。落ち込んだときに勇気をくれる。どんな時でもあいつは必ずやってくる。『太陽』みたいに絶対に変わらない『不変』の存在なんだ。本人は天然でやってるんだろうけどなぁ」 「クリリンさん・・・」 「けどな、悟飯。俺達にとっての太陽が『悟空』なら、悟空にとっての太陽は『チチ』さんなんだ。初めてあいつを本当の意味で大切にしてくれた貴女なんだよ。だからあいつは・・・」 「・・・そう。そうですよね。・・・良く分かりましたよクリリンさん。ありがとうございました。僕、お父さんをもっと知りたくなりました!それでちゃんとした意味で越えてみたいんです!その『意味』がどういう事なのか・・・まだ僕には分からないですけど。でも、分かる日が来ると思うんです。必ず!」 「悟飯、偉いぞ。やっぱりお前は悟空の血を引いてるよ。大丈夫さ、お前ならやれる!頑張れよ、悟飯!!」 「はいっ!・・・それじゃあ僕、お父さんを探しに行ってきます!もう夕方だから、もしかしたら家に帰ってるかもしれないし・・・」 「あぁ、じゃあな悟飯!」 「また、今度ゆっくりと遊びにきまーすっ!」 そう叫びながら悟飯は自宅があるパオズ山に向かって飛び立っていった。 少年から大人へと変化していくその心。 クリリンはその手助けが出来たことを誇りに思いながら見守っていた。 ・・・・・そして・・・・・ 「ところで悟空。何時までそんなところに居るつもりなんだ?」 亀仙人が現れたすぐ側の木の影に隠れていた悟空がオズオズと出てくる。 「オラの気配がバレてたのかι」 申し訳なさそうに腰を低くして近づいてくる悟空に苦笑いをする。 「・・・なぁ、悟空。もしかして最初から俺にあんな恥ずかしいセリフを言わせるために一芝居うったわけじゃないよな?」 確信犯もネタがバレれば吐くしかない。 「いやぁすまねぇ。悟飯のやつの本心が知りたくなってな。オラが聞いたってあいつは正直に答え『すぎる』。だから他の誰かに聞いてもらいたかったんだ。あいつの為にも・・・」 いとおしそうに悟飯のもう見えない後ろ姿を『見つめる』悟空。 「悟空。・・・あいつは、大丈夫だ。心配ないよ」 「そうだな」 笑いながら話す二人はやはり『親友』だった。 「でもよぉクリリン。気付いてたんなら本当にあんな恥ずかしいこと言わなくても良かったんじゃないのか?///」 照れながら問う悟空にクリリンはニヤッと薄笑いを向ける。 「俺だけがあんなに苦労したんだ。かわいい仕返しだろ?」 こうして親友同士の語らいは続く。 『何か』を分かつことの出来る存在が自分に居てくれたこと。 『ありがとう』の気持ちを込めて・・・ 二人はどちらからともなく握手した ※あとがき 『親子』の難しさを実感したこの数日(笑)。 何か形に残したくて作った作品がコレ。 本当の家族じゃないから、悟空や悟飯。クリリンの気持ちは考えるしかない。 【こんな風に思っていてくれたなら・・・】 願いを込めて作り上げました。 読んでくださった方々の心に『何か』を残せたらいいのになぁ♪ (^-^)v |