わが夢は星の彼方→伽耶の目指せ天下一!!→また・・・会おうな








『また・・・会おうな』









「やっほぅ!またオラの勝ちー♪」

「ぬぅぅぅぅι」

悟空のあの世暮らしの中で、何故か定着してしまったことがある。
ひとつは、毎年一度だけ開催されるあの世一武道会に参加すること。
ふたつめは…
言わずと知れたテレビ観戦をしながらのババ抜き。

悟空・界王様・バブルス・グレゴリーの二人と二匹は飽きもせずに毎日やっている。
今日何度目かも分からないババ抜きの決着について口論を始める二人。

「悟空、お前の中に『負ける』という言葉は無いのか!?」

大人げないとはこれっぽっちも思っていない界王様。
まるであの世の亀仙人だ。

「界王様〜遊びなんだからさぁ、そんなマジに怒ることないだろ〜?」

悟空は慣れているのかいつものセリフでなだめる。

「いいや、ただの遊びといえどもこの界王が人間に負け続けるわけにはいかーん!」

二人を余所に、バブルスとグレゴリーは素早くトランプを片づけるとテレビのスイッチを入れた。
画面には下界=この世が映し出されていた。
辺り一面気持ちの悪い紫色をした雲に覆われ、雷が轟き、嵐のような風に流されながら霰並の大きさをした雨粒が滝の水しぶきのように降っていた。
二匹が無言でテレビを見ているのに気づいた二人は、

(どうしたんだ?)

と思いながら、一時休戦してテレビをのぞき込む。
地球を久しぶりに見た悟空はうれしいのか驚いたのか…
何とも怪訝な顔つきをしていた。
しかし、何を思い出したのか表情が曇る。
界王様がのぞき込んでも気づいていない。先ほどの口論で自分の立場が劣性だったのが気に入らない界王様は仕返しをするべく耳元で叫ぶ。もちろん腹の底から。

「わぁーーーっ!!」

キーン…と耳鳴りがした後に悟空は界王様を睨んだ。

「いってーι界王様ひでぇじゃねぇか!オラ何にも悪くねぇのに…おー、いてっ」

耳を押さえながら頑張って反抗する。
界王様はしばらく笑うと悟空に訪ねた。

「悟空よ。地球が…いや、あそこに住む者達が気になるか?」

いきなりの質問でしかも図星だっただけに言い返せずに黙る。
だがやっとひとつの言葉が浮かんだ。

「雷が…。雷が鳴ってるだろ?チチのやつ雷苦手でさ、今頃はどうしてるんだろうなぁ…って思ってさ。まぁ悟飯も牛魔王のおっちゃんもいるし、大丈夫だろ。心配ねぇよ!」

答えた悟空の笑顔はどこか影のある笑顔だった。
いつも太陽のような笑顔を見せてくれる悟空だからこそ、違和感があればすぐに気づく。
バレてないと思っているのは本人だけ。

「…生き返りたいか?悟空」

界王様の質問は望んでいた願い事でもあり、決して叶えてはいけない願い事でもあった。
たとえ周りが望んでいたとしても…

「まぁな、そう思う時もあるけど…いつまでもドラゴンボールに頼ってばかりはいられねぇし。やっぱり人は自然のままに生きて、そして死んでいった方がいいとオラは思う」

悟空は悟空なりにちゃんと先まで考えていた。
ドラゴンボールは何でも願いを叶えてくれる。
けれどそれは人にとって、何より自分達にとっては諸刃の剣なのだ。
自然の法則を無視した、本来有るべきはずのない力。
最初から無かった方がよかったのではないか…
だけど、ドラゴンボールを知らなければ今のみんなには出会えなかった。
大切なのは『何時』『どんな時』に使うか。
それさえ間違わなければ共に生きていける。

この時界王様には聞こえた気がした。悟空の悲しい、けれど力強い心の声を。

「…そうじゃな」

悟空は界王様の反応に一瞬亀仙人を思い出した。
まだ何も知らなかった自分に人としての在り方、本当に大事なものを教えてくれた師匠。

「ありがとな、界王様!!…よぅし、バブルス、グレゴリー!もう一勝負するか♪」

二匹を連れてその場から離れていく悟空。
その背中は…
何よりも大きく見えた。

「あれほどの人間がいたとは…。よほど良い仲間がいたんじゃろうな。その出会いや出来事が今の悟空を育て上げたのだろう」

遙か遠くを見据えるように顔を上げる界王様。
その姿もまた、悟空とは違う『大きさ』を漂わせていた。


「界王様〜いつまでそうしてんだ?こいつ等だけじゃ物足んなくてさぁ、一緒にやろうぜ!」

悟空の発言に二匹はかなりご立腹な様子。

「お、おい。そう怒んなって…ってうわっ!界王様助けてくれよー!!」

転かされた体を起こし必死に逃げる。
追いかけられながら叫び続ける悟空に

「やれやれ…」

と呟きながら助けに向かう。



二匹と二人が揉めているとき、付けっぱなしにしていたテレビに写っていたのは…

雲の隙間から光が差し込み始めた映像だった。






「ん?」

地球にいるクリリンや悟飯。ブルマ達はその光が妙に懐かしくて…。
誰でもなく、もしかしたら全員が一緒に呟いたかもしれない。

「悟空?」
「お父さん?」
「孫くん?」






「ん?」

悟空が急に走るのをやめてしまったために、後ろは次々に衝突していった。
鼻を押さえて悶えていた二匹を跨ぎ、界王様が悟空の横に立つ。

「どうしたんじゃ?悟空」

正面を真っ直ぐ見つめる視線をそのままに悟空は答えた。

「…今。今誰かに呼ばれた気がしたんだ。良く分かんなかったけど、確かに呼ばれたんだ」

…雰囲気が違う。

直感でそう感じた界王様は、今一番悟空にとって必要かもしれない言葉を探し、紡いでいく。

「悟空よ、お前達のつながりはお前が死んだからといって無くなるようなものではないはずじゃ。違うか?その程度の絆で結ばれている訳ではなかろう。……きっと、お前の仲間が噂でもしておったんじゃろう♪」

最初のシリアスな内容からえらく冗談混じりな終わり方をした界王様の言葉に呆れる悟空。

「はははっ!案外そうかもしんねぇな!でも…まっ、いいか☆」

切り替えの早い悟空に苦笑いしか出来ない界王様。




――あの世はいつもこんなカンジだ。
元気でやってるからみんなも元気でな!

クリリン、チチや悟飯の事頼むな。

ブルマ、ベジータとトランクスが仲良くなれると良いな。
頑張れよ。



みんな…

オラは後悔なんかしてねぇ。

大丈夫だ。

オラはいつだってみんなのこと見てるから…



幸せになってくれよ!!










※あとがき
今日は雷がひどかったι
それで思いついた今回のネタ。
そして実行。


かなり良い?
お気に入り♪
上手くできた☆

幸せv


悟空が…
死んでいった大切な人たちが見守ってくれている。
そう思うだけで元気になれる。
めげた時には勇気をくれる。


死んだら終わるんじゃない。
そこから新しい物語が、その人の新しい人生が始まる。

区切りみたいなものなのかもしれない。


いつかは分かるかもしれない。

分からないかもしれない。

どちらにしても、悔いのない人生送れたら、うちの人生文句無し!!
(^-^)v



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