わが夢は星の彼方→伽耶の目指せ天下一!!→side story









『side story』





留守を悟飯に任せた悟空とチチは、二人で結婚記念日を過ごす為に家から少し離れた所にある『辺り一面花畑』という何ともロマンチックな場所に着ていた。

「さ、悟空さはそっち持ってけろ」

シートを敷くために広げたは良いが苦戦していたチチ。
悟空に助けを求めたが…

「ん?そんなもんいらねぇよ」

アッサリ断られてしまった。

「でもな悟空さ、敷かねぇと服の汚れが取れにくくなっちまってオラが後で苦労すんだぞ!?たまにはオラの言うことも聞くだ!!」

悟空は少々拗ねた顔をしながらもチチの手助けをするためにシートの端を持ち、広げた。

(今日は何か特別な日って言ってたからな。あんましチチの機嫌を損ねねぇ様にしねぇと後が怖ぇし…ι)

そんな事を思っていたのもチチにはお見通しな様で…
クスクスッと笑っている。
そして

「心配しなくたって良いだよ悟空さ、今日は滅多なことでは怒らねぇだ♪」

釘を刺すように言われた悟空は、苦笑いをするしかなかった。



シートを敷き終わってお弁当を広げ始めたチチの手を悟空が握る。
突然のことでドキドキしてしまった心臓を何とか落ち着かせ、悟空の目を見る。
何かいつもと違う雰囲気を纏わせた悟空は、あの『無邪気な子供の様』と言うより『大人の男性』になっていた。
もちろん本人に自覚はない。

「悟空さ?」

やっと出た言葉は、この状況を説明させるには十分な内容だった。

「今日はオラがやる。チチはゆっくりしてればいい」

そう言うとチチの代わりにお昼の準備を始める。

(悟空さ急に…。どうしちまっただ?)

不安に駆られない様に、紛らわす口実が何かないかと辺りを見回す。
そして見つけた。
今一番必要かもしれないモノを。

「悟空さ、ここで少し待っててけれ」

「…あ、あぁ」

悟空は良く分からなかったが、取り合えず納得した素振りをする。
チチは悟空に笑顔を向けると立ち上がり、花畑の中に走り出す。

「チチのやつ、何するつもりなんだ?」

独り言を言いながらも手は着々と準備を進めていた。



太陽が真上より少し西に傾き始めた頃、やっとチチが帰ってきた。

「おーい、チチー!どこまで行ってたんだ?オラもう腹減っちまって我慢出来ねぇよι」

チチの帰還を心待ちにしていた悟空にとって、今まさに天使が舞い降りたように見えただろう…

「すまねぇだ悟空さι」

悟空と向き合う様に座るチチの額には汗が光っていた。
急いで帰ってきた事が良く分かる。

「チチ、大丈夫か?」

疲れた様子を見せない笑顔が妙に痛々しい。
悟空にしてみれば、それが何よりも心配だった。

「大丈夫だ!悟空さは気にしなくても良いだ!」


…チチは昔から悟空に泣いたり怒ったりしたことはあっても、『辛い』と弱音を吐くことは無かった。
だから未だにチチの事で分からない部分がたくさんある。


今まで気づかないフリをしていた悟空にとっては疑問の回答を得られるチャンスである。

「でもよぉチチ。オラに何か隠してねぇか?」

チチにも分かっていた。悟空が知りたがっていることは…。
しかし今はまだ言えない。ある意味女の意地でもあった。

「隠し事なんかしたってオラには何の得もねぇだ。…さ、お腹も減ってきたとこだし、お昼にするだよ」

(悟空さも待たされる気持ちに気づく良いチャンスだ。まだ答えは言えねぇけども話す時は必ずくるだ。それまでの我慢だべ、悟空さv)

上手く逃げられたのに、悟空はそれ以上追求しなかった。
チチからいつか話してくれる時が来ると信じているから…
二人の間にある『絆』を信じられるから…



食事が終わり、二人で仲良く昼寝をしていた。
悟空の腕の中で、安心しきった寝顔で穏やかな寝息をたてるチチ。
チチの温もりを身近に感じるために、優しく抱きしめながら眠る悟空。

二人の間には…

チチが花畑で見つけた一輪のあやめが置かれていた。

『信じるものの幸福』

今の二人には、無くてはならない気持ちだと思うから。



幸せな時が流れていく…



「…ん?」

気がついた時には、すでに太陽が顔を隠し始め、月が大地を照らし出していた。

「悟空さ、悟空さ起きるだ!!」

チチに揺さぶられ、まだ重たい眼を擦りながら体を起こす。

「何だ?チチ。もう夕飯か?」

寝ぼけている悟空に声を張り上げる。

「寝ぼけてる場合じゃねぇだ!早く帰らねぇと悟飯と悟天が心配するだ!…いいや、それだけでねぇ。夕ご飯の準備もまだだ。二人共ご飯はまだちゃんと作れねぇから、自分達でやろう何て考えちまったら大変だ!台所のものをみんな壊してしまうだ!!そうに違いねぇ!!悟空さ何もたもたしてるだ!早く帰る支度するだ!!」

反論の間を与えず準備に取りかかる。シートを畳みたいのに悟空が邪魔で出来ない。

「悟空さ早く退くだ!!」

……ゴタゴタしながらも片づけを終わらせ、悟空を急かしながら舞空術で自宅に向かう。



やっと帰ってきて玄関を開けると…



台所は無事だったが部屋は……



無惨な姿となっていた。


フルフル…っ!
チチの体が震えるのを見て悟空・悟飯・悟天の三人は硬直した。


そして次の瞬間。




雷が、落ちた。


それも特大のやつが。




「オラ関係ねぇのに…ι」

悟空の呟きは空気のように流れていた…





※あとがき
掲載初の悟チチ。
クリリンと18号の話しを書いていて…
ふいに
『悟飯達のハチャメチャ番外編でトランクス書いたから今度は悟空とチチを…』
と思いついて書きました。
……ラブラブまだまだ修行中ι
悟チチファンの皆様が読まれたならば、間違いなく物足りないであろう作品だと確信しております。

頑張りますので、気長にお付き合い頂けたらうれしいです。
v(=∩_∩=)



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