わが夢は星の彼方→伽耶の目指せ天下一!!→あたらしい関係








『あたらしい関係』






未来で17号と18号、そしてセルを倒したオレは、タイムマシンに乗り再び過去に向かった。
皆に報告するために。


着いたところは何もない草原だった。タイムマシンをカプセルに戻し、この時代でのオレの家ともいうべきカプセルコーポレーションに向かう。

(父さんと母さん元気かな?悟飯さんにも久しぶりに会えるんだ。…何か、緊張しちゃうな……)

西の都は前と変わらず活気があり『平和』という二文字を改めて実感した。

(オレの時代もいつかは…)

密かな希望と確信、そして決意を胸に秘め降り立つ。

(ただいま、もう一つのオレの家)

オレはゆっくりと玄関に向かった。そしてベルを鳴らし相手の答えを待つ。

「はい?どちら様でしょうか」

「あ、あの、トランクスと言います。ブルマさんはいらっしゃいますか?」

母の名を恥ずかしそうに呟きながらオレは挨拶した。

「お嬢様ですね?少々お待ちください」

それからすごい勢いで扉が開くまで大した時間はかからなかった。

「トランクス!!」

元気な母さんの姿にオレは思わず嬉しくなった。悟空さんが生き返るのを拒否したことを伝えた時は、落ち込みを隠せないでいたから。

「母さん、お久しぶりです」

お辞儀をして挨拶を済ませた後、

「ほんとに!その様子じゃ、未来は無事に救えたみたいね♪どうせその報告にきたんでしょ?すぐに悟飯くんやクリリン達を呼ぶから、中で休んでなさいよ。……っとそうだわ!ベジータなら多分重力室か寝室のどっちかにいるはずだから、先に会ってきたら?」

「…あっ、はい。どうも」

(どうして何でも分かっちゃうんだろう…こっちから聞きたいことに全部答えられちゃった……)

驚いた顔をしたオレに

「ん?」

っという顔を返されてしまって

「いえ!…何でも」

と急いで答え、二人でリビングに向かう。母さんが電話をしている間、オレは目の前にいる赤ん坊の自分を世話していた。どうも自分で自分を抱いているというのは不思議で…でも笑いかけてくれる度に『お兄さん』の顔になっていたと後で母さんから言われて照れてしまったのをオレは忘れない。

「…そう、今着てるのよ!だからすぐ着てよね!分かった!?じゃあ待ってるわね、うん、それじゃあ…」

一通り電話を終えた母さんが、赤ん坊のオレを腕から掬い上げるように抱き上げる。

「ありがとトランクス。さぁ、早くベジータの所に行ってらっしゃい!皆が着てからじゃ恥ずかしいでしょ?」

「はい!」

「…でもあの子、今のベジータを見て何て想うかしら」

オレはそんな母さんの呟きを知らずに父さんの気を探りながら家の中を進んだ。そしてたどり着いた場所は…
何気ない一つの部屋だった。

(父さんが修行してないなんて…)

オレはどうしたらいいか分からなかった。いつも強さだけを追求していた父さんが修行をしないで部屋に隠っているなんて…
すると

「おい、いつまでそこに居るつもりだ。用がないならさっさと消えろ」

口調はいつもの父さんだ。

「あの…未来で人造人間達とセルを倒したことを皆さんに報告しに……それで…」

言葉が続かない。オレは扉越しにしか言えなかった。

「わざわざ俺に知らせる理由があるのか」

「いえ。ただ父さんと話がしたくて…」

「なら用は済んだだろ。失せろ」

刺のある言い方。でもどこか悲しい感じの声色。それ以上は何も言えずに、オレはリビングに戻った。



「………」

(すまない、トランクス…)

空を見上げながら俺は…そう思うことしか出来なかった。


「あら?トランクスどうしたの?ベジータ居なかった?」

落ち込んでいたオレに母さんは気遣うように話しかけてきた。

「いえ…今、ちゃんと報告してきました。やつらを倒したこと」

「でも会わなかったんでしょ?」

「えっ!?」

「だって今のあなた、全然嬉しそうじゃないもの」

母さんは知ってたんだ。父さんがオレと会わないって事。

「母さん。父さんはどうしたんですか!?あんな父さん見たの初めてで…いつも自信たっぷりだった父さんがどうして!!」

「あいつ、孫くんが死んでからずっとあぁなのよ。よっぽど堪えたのね」

「そうでしたか…」

オレと母さんはそれからずっと皆が来るまで黙ったままだった。

「トランクス!!」×2

「トランクスさん!!」

悟飯さんにクリリンさん、ヤムチャさんが到着して、次々にオレの名を呼んで挨拶してくれた。

「皆さん、お久しぶりです!」

「思ったより元気じゃないか!お前のことだからきっとまた来るんじゃないかって思ってたんだよ!ベジータの息子の割に礼儀正しいし律儀だしな!」

「そうそう、俺もそう思うぜクリリン!」

「だろ?」

「あの、二人共それはあまりにも失礼なんじゃないですか?」

「何言ってんだ悟飯。こんなのが失礼に入ってたんじゃあいつの会話なんて出来ねぇよ」

「でも…」

……オレはいつ話題に入ろうかと悩んでいると、母さんが肩で合図してくれたので逃さず

「あ、あの皆さん!そろそろオレからも喋って良いですか?」

っと、思い切って声を上げてみると

「あ、悪ぃトランクス…」×2

「すいません…」

謝られてしまってオレはつい

「いえ!!すいません…」

と謝り返してしまった。

それから皆と何気ない会話をしながら、未来の事やこちらでのそれから。色々な出来事をお互いに語り明かした。そしてもう陽が沈みかける時間になっていたので悟飯さんが

「あの…皆さん、それじゃあ僕はお先に失礼します。そろそろ帰らないとお母さんが心配するので」

と残念そうに切り出してからは皆、

「じゃあ俺たちもそろそろ帰るわ」

と帰り支度を始めたので母さんと見送りに玄関に向かった。

「じゃあな、トランクス!また遊びに来いよな!」

「トランクスさん!お元気で!!」

「はい!皆さんも!!」

挨拶もそこそこに、皆手を振りながら帰っていった。

(きっと『また』は無いんだろうな…でも皆に会えて本当によかった。ありがとうございました)

そう思ったのが顔に出たのか、母さんが優しく肩を叩いてくれた。

(やっぱり母さんはすごいや…)

「ねーえ、トランクス。いつまでこっちにいるつもりしてるの?」

いきなりの話題に驚いたけど、オレは

「今日はもう遅いので泊めてもらえませんか?明日の朝発とうと思います」

そう言うと母さんの顔が笑顔になった。…微妙な……

「まぁ話しは夕飯の後にしましょ♪」

その日の夕飯の席には父さんがいた。オレはどうしても父さんから目が離せなかった。すると父さんに

「何のつもりだ貴様…」

とでも言いたげな目を返されたので、オレは思わず目を伏せてしまった。折角父さんにまた会えたのに…前帰るときは挨拶もしてくれたから、少しは認めてもらえたと思ってたのがいけなかったのかなぁ……

夕飯が終わるとさっさとどこかへ行ってしまった父さん。母さん達の反応を見るとどうやら最近はずっとあぁなんだと分かった。

ソファに腰掛けて母さんが言っていた言葉と父さんの事をずーと考えていたら、片づけがすんだのか母さんがオレの隣に座った。

「あの、母さん。さっきの話しなんですが…何かあるんですか?」

困った顔をしていたオレに母さんはまたあの微妙な笑顔を向けてくる。後ろに何か隠しているのは分かるんだけど…

「ねぇ、トランクス。たまには親孝行したくない?」

「えっ!?」

意味が分からない…

「あのねぇ〜実は、これなんだけど!!」

そういってやっと隠している物を見せてくれた。しかしそこには…

「『武道大会…優勝者には、豪華家族の世界温泉旅行巡り』?」

「そうなのよ〜。トランクスが産まれてからはあんまり出かけられなかったから『これだ!!』って思ってベジータにも見せたんだけど…あの通り全然やる気無しなもんだからどうしようか悩んでたのよ〜。ね、トランクス、お願い★」

期待しまくりの笑顔にオレは刃向かえなかった…
母さんに刃向かえば後の方が怖いし……

「分かりました…やれるだけやってみます」

「ありがとうトランクス♪さぁ、色々用意しなきゃ!」

ともう決まった様に振る舞う母さんに

「まだ優勝出来るって決まった訳じゃ…」

と言おうとしたら

「何言ってんのよ!あんたに太刀打ち出来る相手なんてこの時代じゃベジータか悟飯くんぐらいよ。ベジータはさっきも言ったから省いて、チチさんがあぁだから悟飯くんは出さないと思うし…ね?そう考えたら優勝しない方がおかしいわよ」

ヒラヒラと手を振りながら去っていく母さんに、オレは開いた口が塞がらなくて…
きっともの凄くマヌケな顔をしていたに違いない…


ブルマは、そんなトランクスを見てクスクスッと口に手を当てて笑うと、真っ直ぐある部屋に向かった。
…そう、ベジータの寝室。扉を開けずに静かに伝える。

「トランクス、しばらく居ることになったから。ちゃんと挨拶ぐらいしなさいよ」



言うだけ言うと自分の寝室に帰って行く妻の気配を感じながら

(それぐらい、言われずとも分かっている。やはり俺は…良い父親にはなれん。自分の感情を上手くコントロールすることすら出来ん。……だが、このままにもしておけんな)

お前は、俺の息子なのだ。自分で納得しないまま帰ることは出来んだろうからな…。



当日、母さんの予想は外れ悟飯さんが出場していた。他にもクリリンさんやヤムチャさん。もう会えないと思っていた天津飯さん。そしてピッコロさんもいた。

何とか上位4名に残れ、後は主催者が用意した敵を倒して真っ先に帰って着たら良いだけだ。何事もなく過ぎると思っていたのに…

用意されていた人間はすでに殺されていた。

「待て、殺し合いじゃないんだ!」

「ゲームだとでも言いたいのか?」

謎の敵は涼しげに答えると、後はどちらからともなく構え…闘い…倒していた。
しかし後ろから来ていた新たな気配にも気づけず、オレは攻撃され…気を失った。

気づいてすぐオレは奴に借りを返すべく気を探り、向かう。悟飯さん達も闘っている最中だった。

「さっきの礼を、たっぷりしてやるぜ!!」

エネルギー波を打ち続けて隙を伺う。しかしオレは意図もあっさりやられてしまい、悟飯さんの声が聞こえたような気がしたが…目の前が暗くなり……また意識を失った。



俺は何をするでもなく、また空を見上げていた。

「……!!トランクス…」

妙な胸騒ぎを覚えた。出かける前に

『預かっていてもらえませんか?…必ず、取りに戻りますから……』

何か思い詰めた顔をしながらも、そう言って今朝自分に手渡されてそのまま部屋の隅に追いやられていたトランクスの剣が鈍く光った様に思えた。

気づけば俺は……巨大な気のぶつかり合う方へ向かっていた。あの剣と共に…



夢を見た。父さんが来てくれる夢。今みたいにどんどん気が近づいてくる。
……夢?…違う、夢なんかじゃない!!
オレは起き上がり、『ホージャック』と呼ばれている敵に向かっていた。

(父さんが来てくれるのに…負けてたまるか!!)

その一心で立ち向かっていく。力の差は分かっていても…
捕まってしまい、体はギシギシッと気持ち悪い音をたてている。

(も…もう、駄目だ……父さん、ごめんなさい)

そう諦めかけていた時、オレの剣が助けてくれた。剣を受け取り胸元でしっかりつなぎ止める。
オレは…一番待ち望んでいた人の名を力強く叫んだ

「父さん!!」

父さんが来てくれた!!……でも結果は…

悟飯さんのお陰で、皆入院はしたが何とか生きて帰ることが出来た。もちろん父さんとピッコロさんの姿はここにはないけれど…

助けに来てくれた。
悟空さんが死んでから闘う気を無くしていた父さんがオレと悟飯さんの危機に!!
その事実だけで、オレは十分だった。
親子らしいものが欲しかったのも嘘じゃない。だけど、父さんとオレとの間には『何か』がちゃんとある。幻のように見えない確かな『何か』が……

しばらくして仙豆のお陰で思っていたより早く回復できたオレに、とうとう未来に帰る日がやってきた。最初と同じ、悟飯さん達や母さんに見送りをしてもらった。もう会えない皆の姿を目に焼き付けながら、握手を…言葉をかわしタイムカプセルに乗り込む


「それでは皆さん!さようなら!!」

タイムマシンの上部が静かにしまっていく。皆の声も次第に小さくなっていく。

「………!!」

手を振りながら言葉を投げかけてくれているこの時代の大切な人たち。

『頑張れ』
『さようなら』
『体に気をつけて』
『また逢おう』

みんなオレを気遣ってくれる嬉しい言葉。

『ありがとう』

心で呟く。そして笑顔で答える。

上昇していくタイムマシンから、父さんの部屋を覗いてみる。
やはり姿はない。
見えるのは……力強く、何度もオレを助けてくれた、厳しくて…プライドが高くて…どこか寂しげで…だけど、誰にでも胸を張って言える自慢の父さんの大きな手が、微かに見えた。
オレも答える様に手を上げた。

見えなくなるまでその手を見つめながら……

「父さん、母さんと幸せに…」



聞こえるはずのない声を聞いた様な気がした。それに答える様に

「……トランクス、未来のブルマを大切にしてやってくれ。俺の分まで」

俺達には、これ以上の慣れ合いはいらない。俺の乏しい感情表現がお前に伝わることが分かったのだから……




※あとがき
かなり無理な設定でした。戦闘シーンはめちゃ省いてるし、セリフはうろ覚えやったから違ってること間違いなしやし……
これからはもっと考えて書きます。いい教訓をこの作品から学べました。
うちには、こんな愛情表現がかなり新鮮で感動しました。
言葉や態度も確かに大切。それじゃないと伝わらないことがあるから。
でも、何気ない仕草にも大事な感情が含まれていたりする。それに気づくのはきっと大変だと思う。
しかーし!!そんな関係になれたらすっごく素敵だと思うのも確かなのです!!
生きてるうちに色んな体験をしたいと感じさせてくれたうちの大事な『こども』です♪



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