わが夢は星の彼方→伽耶の目指せ天下一!!→plainly
『plainly』
亀仙人のところに無事弟子入りを果たした悟空とクリリン。ハードな修行にも負けずに頑張る二人には大きな目標があった。
『天下一武道会に出場する』
でも、これ以外にもう一つ二人にはやらねばならない事がある。それは、高さ10mはあろうかという大岩を動かして亀仙人に武術を教えてもらうことである。
元々はそれが目的の二人は、真面目に毎日20sの亀の甲羅を背負い修行を続けた。
そして五ヶ月が過ぎた頃…
朝の牛乳配達の修行中に、いつも話しかけてくる悟空が今日は何やら悩みがあるような顔をしているのに気づいたクリリンが思わず声をかけた。
『おい、悟空。…悟空!!』
『えっ!?な、何だよクリリン。脅かすなよぉ』
思わず転けそうになった牛乳瓶を直しながら悟空が呟く。
『脅かしてないだろ!?…どうしたんだ?今日のお前何か変だぞ?考え事するなんて』
(お前が悩むなんて…こりゃ今日は雨だな)
何てクリリンが思っているのも知らずに質問に答える悟空。
『なぁクリリン。オラ達ちゃんと強くなってるよな?』
狽メくっι
『あ、当たり前だろ!!あの武天老子様の修行を受けてるのに強くなってないはずないだろ!!』
クリリンは悟空を宥めようとした。でなければ自分の力を試すべく色んな物を壊すだろうと考えたからだ。
『…そうかなぁ』
どうやら納得がいかない悟空は、クリリンが考えた通り何かで自分の力を試そうと必死に考えていた。
この五ヶ月で、お互いを少しは理解できる仲になっていたようで、クリリンも何かないかと同じ様に考え始める。
『…う〜んι。……あっ!!そうだ悟空、あの大岩だ!!あれを動かしてみようぜ!!』
(俺って天才♪)
『そっか、その手があったんだ。さすがだなクリリン!!よーし。なら早く終わらせて行くぞ!!』
『えっ!?もうやるのか!?』
クリリンは未だに悟空のこのノリにはついていけないι
『あったり前だろ!!ほら、早くしろよ♪』
(あ〜あ、何で俺までι)
早朝の修行を済ませ、早速大岩に向かう二人。
『悟空、俺はやめとく。見といてやるよ』
『何だクリリン。お前やらねぇのか?』
『当たり前だろぉ。俺にはまだ無理だよ』
そう言うと手を振りながら近くの木陰に腰を下ろした。
『あそ。ならオラが先に動かしてじっちゃんの修行受けてやる』
少し拗ねた顔をして皮肉を言い終わると、すでに岩に向かって両手を着き腰に力を入れ始めていた。
『ぐっ!!ぐぎぎぎぎ…!!!だぁーー!!!!』
悟空が必死に大岩を動かそうとしているのをクリリンは
『どうせ無理だって…』
と呟きながら見ていたが、次第に岩が
『ズっ!!ズズズ…!!』と少しだが動いた音がした。
『へぇ、はぁ、ひぃっ。やっぱまだ駄目だな。ほんの少ししか動かなかった……おーい、クリリン!!見てたか!?オラ少しだけど動かせたぞ!!』
『あっ。あぁ、そうだな。やったな悟空!!』
半分引き吊った顔をしながらクリリンが叫んだ。
(これで悟空とは完全に差がついちゃったな…)
内心では本気でガッカリしたクリリンを知ってか知らずか悟空が言った。
『でもまだまだだな。もっとちゃんと動いたとこを見てもらうためにいっぱい修行しないと…』
『悟空。…お前、動いた事伝えないのか?だってさっきは自分が先にって…』
『うん。あれはお前がやる気ねぇと思ったから言ってみただけだ。伝えるときはクリリンも一緒じゃないとオラ嫌だからな!!それに強くなってるって事も分かったし、修行頑張るぞ!!』
笑顔で一番欲しかった言葉をくれた悟空に、クリリンは
『あぁ!!そうだな!!さぁ悟空、朝飯食いに戻ろうぜ。ランチさんも武天老子様も待ってるからさ!!』
『おぅ♪』
と答えた悟空を指で促し先に行かせた。そして走り出した事を確認してから、堪えていた涙をホロホロとこぼしながら
『ありがとうな、悟空。お前がいてくれて良かったよ。だからこそ俺は、お前にだけは負けたくない。それに、お前は俺の初めての親友になった男なんだ。これからも…ずっと一緒に頑張ろうな!!』
これは自分と自分の約束であり秘密。いつか悟空と肩を並べられる日がくることを信じるための、自分だけのジンクス。
晴天の、風が心地よい、とある朝の出来事。
何気ない朝が、大事な朝に変わること。何気ない言葉が、自分を大きく変える言葉に変わること。自分達はまだまだこれからなのだと実感できたこと。
『今を、この時を絶対に忘れない』
少し成長した二人の心を後押しするように、風が吹く。
あとがき
※未来はいつだって白紙。決まっていても、変わる瞬間が必ずある。それはとても当たり前の中にあったり…今この時にもあったり…ずっと先かもしれなかったり…誰かから与えられる物であったり…
それに気付けたなら、ちょっぴり幸せになれるかも。何かをを認められることが大事だと思えたなら、ちょっぴりうれしくなれるかも。
成長する種は、いつだって育っている。枯らすか枯らさないかは自分次第…どうせなら咲かないともったいないよね(笑)